星新一『つぎはぎプラネット』
一年も前にこんな新刊が出ていたとは知りませんでした。
星新一の文庫未収録作品の全集。
元々の掲載誌が子ども学習誌だったり企業PR誌だったりと「つぎはぎ」のため、
文体や内容があちこち飛びますが、いずれの作品もやはり文句無く面白いです。
いや、「文句なく」は少し言い過ぎかもしれません。
未収録、というだけの質の差はあります。
星新一の作品を読み倒している人からすると、
「あれ?」と思うかもしれません。
あの、時代に左右されない内容と表現を追究した星新一がこの作品を?と。
しかし掲載誌を見ればそれも納得です。
そして文庫未収録とした事情もその辺りにあるのではないかと思われます。
なので星新一初級者の方は、ぜひこの本は後回しの楽しみに取っておいてください。
あまり序盤に読むと、「なんだ、こんなものか」となってしまうかもしれません。
それにしても、読んでいて驚くのは、作品ごとに付記されている発表年。
実に今から4、50年前の作品たちなのです。
例えば「〜〜年後の未来」系の話もよく出てくるのですが、
これがとても1960年代や1970年代に書かれたものとは思えません。
宇宙系の話になると今でも現実化していないものも少なくないですが、
ピタリと言い当てているものも多くあります。
なお、読むと分かりますが、数打てば当たるタイプの予言ではありません。
星さんの予想されていた未来はかなり一貫性があると感じます。
その中でも特に1965年の「SONY NEWS(ソニーPR誌)」No.85に掲載された
「ビデオコーダーがいっぱい」という作品は面白い。
50年前に今の動画社会を見事に予想しています。
これだけは上記の「後回しにしてください」を置いといても読んでほしい作品です。
でもやっぱり、他の作品を一通り読んでから、この本に来てほしいですね。
これ以外なら、どれでも面白いですから。
(なお、長編・短編よりは、ショートショートの方がやはりオススメです)
うちの教室には新潮文庫は全部揃っていますので、ぜひ。